大腸ポリープ、胆嚢ポリープ、胃のポリープなど、健康診断で耳にすることも多い言葉ですが、ポリープとは、一般的に体内で過剰に増殖する組織のことを指し、婦人科領域では、子宮に生じるポリープを子宮ポリープと呼んでいます。
無症状の場合もありますが、月経のトラブルや不妊の原因となったり、癌になるリスクが隠れていたりすることもあるため、子宮ポリープが疑われる場合には、正確な診断や治療の必要性の検討が必要になります。このコラムでは、子宮ポリープについて、その分類、原因、診断、治療方法の観点から解説していきます。
目次
子宮にできるポリープとは?
子宮ポリープは、その発生する位置により、子宮体部に生じる子宮内膜ポリープと子宮の出口に生じる子宮頸管ポリープに分類されます。子宮内膜もしくは子宮頸管の細胞の増殖が過剰となり生じたもので、その殆どは良性です。ここでは、その2種類のポリープについて、特徴の違いを踏まえながら説明していきます。
出典:ガイドラインCQ212
子宮頸管ポリープの症状と原因
子宮頸管の内腔に隆起性に突出するものを子宮頸管ポリープと呼んでいます。原因は明らかではありませんが、慢性的な炎症が関係していると考えられています。
子宮頸管ポリープは不正性器出血や性交後の出血などを来たすことがあるものの、無症状に偶然に診断されることも多い良性疾患です。子宮頸管ポリープの30%は妊娠に合併するとも言われており、妊娠子宮では、子宮頸管腺が増えて分泌や血流が増え、ポリープが形成されやすいと考えられています。妊娠中には、出血しやすく、感染や炎症の原因となり、流産や早産などをきたすという報告もあるため、妊娠中に発見した場合には注意が必要であり妊娠を考える前に切除するケースもあります。子宮頸管ポリープの中に癌の成分が見つかることは、0.2-0.4%ときわめて稀であると考えられています。
出典:産婦人科病理学診断図譜p132-134
子宮内膜ポリープの症状と原因
子宮内膜ポリープとは、子宮内膜から発生し、通常は0.5-3cm程度の大きさで内膜から突出したもので、閉経前後の時期に多く見られます。発生する数や、大きさは様々です。子宮内膜ポリープは、過多月経や過長月経、不正出血の症状を伴うケースが多いです。内膜ポリープでは、7割が良性で癌病変は0.8%にすぎないという報告もありますが、不正出血があり、18mm以上の大きさがある場合、癌病変である可能性が高くなります。
原因は明らかではありませんが、女性ホルモン(エストロゲン)が関係していると考えられています。乳がんの治療として子宮に対してエストロゲンの作用を示す、タモキシフェン服用している場合には、8-36%で発症し、悪性化の可能性は3-10.7%と言われているため、注意が必要です。
体外受精患者の6-8%の頻度で子宮内膜ポリープを合併するという報告がありますが、妊娠率の因果関係について不透明な点が多いのが現状です。
出典:Karaylcin R. et al. Results of 2500 office-based diagnostic hysteroscopies before IVF. reprod Bioned Online. 2010:20(5); 689-93
産婦人科病理学診断図譜 : p259
産婦人科診療ガイドライン : 婦人科外来編2020CQ212
子宮頸管ポリープ・子宮内膜ポリープの検査・診断方法
子宮頸管ポリープは、基本的に内診による子宮口を観察することで診断が可能です。子宮頸部の細胞検査も行い、悪性腫瘍ではないことを確認します。
子宮内膜ポリープは、超音波検査で白くキラキラと映るため、月経終了直後、子宮内膜がまだ厚くなっていない時期の超音波検査が望ましいです。
子宮内膜ポリープが疑われた場合には、同様に子宮内膜の細胞検査を行い、悪性ではないことを確認します。
また、子宮内膜ポリープは、超音波検査などで疑われた場合に、簡単に子宮内に細い管を入れて通水して、ポリープの形態を浮き上がらせるソノヒステログラフィーという検査や、子宮鏡により実際に子宮内腔を観察して詳細な診断が可能です。
子宮頸管ポリープ・子宮内膜ポリープの治療法
子宮頸管ポリープについては、挟む器具を用いて捩じりながらそのまま切除することが殆どです。出血が多く予想される場合には、子宮鏡で病変を観察しながら、子宮に付着する茎の部分を削っていくこともあります。子宮内膜ポリープは、子宮鏡で病変を観察しながら、電気メスで出血を焼きながら切除します。通常、痛みはほとんどなく、手術当日も基本的には日常生活には支障ありません。
子宮内膜ポリープを有する不妊患者に対し、ポリープ切除術を先に行った場合、妊娠率が高いという結果がある他、ポリープ以外に不妊の原因がない場合、子宮内膜ポリープ摘出の手術をすることで妊娠の可能性が高まると言われています。
出典:Perez-Medina T. et al. Endometrial polyps and their implication in the pregnancy rates of patients undergoing intrauterine insemination: a prospective, randomized study. Hum Reprod 2005: 20(6) 1632-5.
松本レディースクリニックなら相談・手術が安心
子宮頸管ポリープは外来診療の中で、出血のリスクが高くないと判断した場合には、その場で切除が可能です。
子宮内膜ポリープは、超音波検査でのスクリーニング、上述のソノヒステログラフィー検査や、子宮鏡による診断が可能です。妊娠や月経症状の観点などから切除手術が望ましいと判断された場合には、近隣の病院に速やかに紹介しております。
不正出血や過多月経などにお困りの場合、お気軽にご相談ください。
まとめ
子宮ポリープ、特に子宮内膜ポリープは、無自覚に過多月経や不正出血の原因となり、QOLの低下を引き起こす他、不妊(着床不全)の原因となっていることもあります。月経の中で自然に消失することもあり、必ずしも治療を要するわけではありませんが、過多月経や不正出血に困っている場合には、一度婦人科受診による内診、エコーによる診察、必要に応じて子宮鏡の検査がお勧めされます。