精巣上体とは、精巣の隣にある臓器で、精子を運ぶ役割だけでなく、精子の成熟、受性能獲得に重要な役割を果たしていることが知られている重要な臓器です。精巣上体炎とは精巣上体に炎症を起こしている状態で、尿道から侵入してきた細菌の感染が原因となります。精巣上体は精巣の隣にぴったりと付着し、通常は触ってもほとんど自分で認識することはありません。ところが、炎症を起こすと通常の数倍まで腫れ上がります。精巣上体で炎症を起こすと、治癒後も精子の通路が閉塞して男性不妊の原因となることがあるので、注意が必要です。
精巣上体炎とは
精巣上体に細菌が感染して起こる病気です。通常睾丸が腫れて痛いという訴えで受診することが多く、陰嚢の痛みを伴う他の疾患との鑑別が重要になります。また、原因となる菌についても年齢によって異なり、性的な活動性が高い若年者においては、淋菌やクラミジアなどの性感染症が原因となることが多く、高齢者では大腸菌を中心とした腸内細菌科の細菌が原因となります。
精巣上体炎の症状
精巣上体は急な陰嚢の痛みと陰嚢内容の腫大を伴います。強い痛みがあるので、精巣の痛みや腫れを主訴に外来を受診されます。一般に急性陰嚢症と言われ、精巣炎や精巣捻転などとの鑑別が重要になります。精巣捻転の場合は発症から4時間以上経過すると精巣に不可逆的な障害が生じ、そのまま放置すると精巣が壊死に至るため緊急手術が必要になります。一方精巣上体炎は、陰嚢痛や陰嚢の腫大に加え、発熱や炎症反応の上昇、精巣超音波で精巣上体の腫大を認めます。
精巣上体炎の原因
精巣上体炎は尿道からの逆行性感染によって起こります。尿中に原因となる菌を検出することで、原因となる菌を特定します。性的活動性の高い若年者でしゃ、オーラルセックスでの接触も含め性的な接触があれば、淋菌やクラミジアによる感染を疑います。高齢者では、大腸菌などの腸内細菌が原因となることが多いのですが、前立腺肥大症などの尿路合併症をともなっていることが多く、排尿の管理を同時に行わないと、再発を繰り返してしまうため注意が必要です。
精巣上体炎の検査、診断
精巣の痛みは、触診では精巣を圧迫するとより強くなります。尿検査では、尿中に白血球を認めることが多く、性感染症を疑う場合には、淋菌やクラミジアのPCR検査、大腸菌などの腸内細菌を違う場合には尿の培養検査を行い、原因となっている菌を特定します。また、精巣の超音波検査を行い、精巣上体の腫大を確認します。このような検査を行うことで、急性陰嚢症を起こす他の疾患との鑑別を行います。
治療方法
精巣上体炎の治療は原因菌をターゲットにした抗菌薬の投与と清掃の冷却になります。ただし、初診時には原因菌を特定することができないため、性的な接触の有無や病歴などを確認し、尿の培養またはPCR検査を行い、抗菌薬の投与を行います。検査の結果が確認できるまで数日は抗菌薬を続け、検査結果により抗菌薬の変更を行います。もしも、性交渉による感染であれば、感染相手の治療を同時に行うことも重要になります。
治療後
精巣上体炎の後にしこりができる場合は、精巣上体管という精子の通り道が詰まってしまっている可能性があります。もしも、両側の精巣でこのようなことが起こると無精子症になってしまいます。無精子症となった場合、お子様を望まれる方は、精巣の中から精子を採取してくる手術や精子の通り道をつなぎ直す手術をする必要があります。
松本レディースクリニックでは
松本レディースクリニックでは泌尿器科専門医かつ生殖医療専門医が診療をおこなっています。精巣上体炎後の無精子症であっても、適切な治療方法をご提案します。
当院ではご夫婦で通院している患者様のみの診療となります。
まとめ
精巣上体炎は急な痛みと精巣の腫大を伴う疾患です。症状は適切な抗菌薬を投与することで消失しますが、治療後に不妊となるリスクがあるため、精巣の痛みや腫れがあった方で、なかなかお子様ができない方は一度専門医にご相談ください。