最初に妊娠を考えた時に、自分はすぐに妊娠しやすいのか?しにくいのか?どうしたら妊娠しやすいのか?気になる方は多いと思います。今回は妊娠しやすい体質のポイントや、セルフチェックの方法、妊娠をしやすくなる体質、習慣について説明していきます。カップルで妊活を考え始めたけれど、まずは何から始めたらいいかわからない、今すぐ妊娠したいわけではないけれど、準備はしておきたいという方に是非読んでいただきたいです。
目次
すぐ妊娠できる人・妊娠できない人の違いとは?
妊娠しやすい人のポイントは下記のとおりです。
・月経周期が順調
月経周期の正常範囲は25-38日です。これより短い、あるいは長い方は排卵していなかったり、していたとしてもタイミングが大きくずれている、排卵の回数が少ないことがあります。
・生理の量が正常
正常な生理の量は20-140ml程度。量が多いとされる2日目で2-3時間ごとにナプキンを変える必要があるイメージです。子宮筋腫やポリープ、子宮腺筋症など子宮の形を変形させる病気があると生理の量が増えたり、それにより着床しにくくなったりします。また、少ない場合は無排卵の可能性があります。
・生理痛がない(または軽い)、性交痛がない
上記の症状がある場合、子宮内膜症がある場合があります。子宮内膜症は、卵管の閉塞や着床の妨げになることがあります。
・過去に性感染症にかかったことがない
クラミジア感染症により卵管が閉塞していることがあります。
・35歳以下
35歳を境に次第に妊娠率は低下し、流産率は上昇します。
・体重が適正範囲内
太りすぎ、痩せすぎは排卵障害につながることがあります。
・喫煙の習慣がない
男女とも、喫煙していると妊娠率が低下します。
・甲状腺疾患や糖尿病などの持病がない
病気によっては妊娠に影響を与えるものがあります。
・避妊していない期間が短い
年齢にもよりますが、避妊していない期間が長くても妊娠しない場合は、原因が隠れている可能性が高くなります。
・腹部の手術をしたことがない
手術の内容によっては子宮や卵巣の周囲が癒着していることがあります。
・大人になってからおたふくかぜにかかったことがない(男性の場合)
思春期以降におたふくかぜにかかると、精子に影響が出ることがあります。
もちろん、上記に当てはまれば必ずすぐに妊娠できるとは限りません。不妊の原因には沢山の要素があり、検査しても分からない原因不明ということもあります。
自分が妊娠しやすい体質かどうかチェックする方法
まずはセルフチェックで上記に当てはまるかを考えてみましょう。当てはまるものが少ないほど妊娠への道のりが遠い可能性があります。
基礎体温をつけてみるのは自分の月経周期を把握する参考になります。月経周期が適正か、低温期と高温期が分かれているかを把握することで、排卵している可能性が高いか判断することができます。
生理の量や痛みにトラブルがある場合は、超音波検査を受けましょう。子宮筋腫や卵巣嚢腫がないか、ある場合は妊娠に影響する可能性が高いかどうかを判断する大きな材料になります。
おりものの量が多い、あるいは過去に性感染症に感染した経験がある場合は、性感染症の検査や卵管が通過しているか調べてみましょう。クラミジアに感染すると、卵管が閉塞して自然妊娠が難しくなる場合があります。
持病がある場合も、コントロールが悪いと妊娠率の低下につながることがあります。健診で異常を指摘されたけれど忙しくて受診できないという方もいらっしゃいますが、早めに検査するのをお勧めします。
「避妊しないと妊娠する」は間違っている?
男女ともに健康で生殖機能に問題のないカップルが排卵日前後に性交渉を持った場合、1周期あたりの妊娠率は20代で約20%とされています。およそ半年で7割、1年で9割程度のカップルが妊娠する計算です。つまり、「(90%のカップルが)避妊しないと(1年程度で)妊娠する」は正解です。
ただしこれは生殖機能に問題がないことが前提ですので、10%前後の方には「避妊しないと妊娠する」は当てはまらないことになります。特に、先に述べたような生理周期が不順であったり、生理の量や期間、痛みに問題がある方はそのリスクが高いと言えますので、早めの受診を検討しましょう。それらのトラブルがなくても、原因不明の不妊の方も多くいらっしゃいますので、20代で1年程度、30代前半で半年程度妊娠しないようなら受診を考えましょう。
また、自然妊娠の確率は年齢とともに低下し40代では5%以下になります。特に30代後半からは急激に妊娠率は低下し、流産率は上昇していきます。30代後半になったら妊活を考えたら早めに受診しましょう。
妊娠しやすいタイミングを予測するには
米国生殖医学会では、自然妊娠を目指す場合のポイントとして、「妊娠しやすい時期は排卵の4日前~排卵前日の4日間であり、排卵日と排卵5日前は同等に低い」としています。月経周期が28日周期の方であれば、およそ14日目が排卵日とすると、月経10日目から13日目が妊娠の可能性が高いといえます。
排卵が近くなるとホルモンバランスが大きく変わり、子宮頚管粘液(おりもの)に変化が出てきます。粘り気があり、糸を引くように伸びが良くなるようになるので、排卵日が近い一つの指標といえます。(このような変化がない方もいますので、おりものが変わらないから排卵していないということではありません)
自宅でできる簡便な検査として、薬局で購入できる排卵検査薬を使用する方法があります。これは、排卵近くになると上昇するLHというホルモンを検出するもので、キットの標線と同じかそれ以上に濃い色が出ると陽性と判断し、陽性がでてから2日以内に排卵する可能性が高いため、タイミングをとりやすくなります。
ただし、多嚢胞性卵巣症候群や早発閉経などでもともとのLHが高い方の場合はずっと陽性が出続けることがあります。また、月経周期が不順な場合は使用する期間が長くなったり、うまく検出できないこともあります。そのような方は早めに病院に受診すると良いでしょう。また、正常でも、検査のタイミングによってはLHの検出期間をすり抜けていることもありますので、陽性が出ない=排卵していない、ではありません。
病院では排卵日を推定する検査として、超音波で卵胞の大きさを測ります。月経中2-5mm程度であった卵胞は通常は一つだけが育ち始め、排卵日が近くなると1日あたり1.5-2mmずつ大きくなります。おおよそ20mm前後で排卵するとされていますので、その少し前からタイミングをとると良いでしょう。
基礎体温から推定する排卵日は、体温が一番下がった日、低温期の最終日、高温期の初日などいろいろな報告があります。ただし、必ずしも採血や超音波の結果と一致しない場合も多く、排卵日を予測する目的では基礎体温は指標にはし難いのが現状です。
自分の卵子年齢を把握する重要性
卵子は胎児の時期に作られます。つまり「卵子の年齢=自分の年齢」です。精子と違い新たに作られることはないので、年齢とともに卵子の質は低下し、妊娠率は下がっていきます。
では、若ければ妊娠を焦る必要はないか?というと必ずしもそうではありません。卵子の「質」は年齢と相関しますが、残りの卵子の「個数」は個人差が非常に大きいものです。その数の指標となるのがAMH(血清抗ミュラー管ホルモン)です。AMHは卵巣内に残っている卵子の数と相関すると言われているため、若くてもこの数値が低ければ、妊娠可能な期間が短い可能性があり、早めの妊娠を考える必要があります。場合によっては若くても早急に不妊治療を開始し、高度な治療も視野に入れたほうがよいでしょう。自分がどれくらい妊娠を急ぐ必要があるか、作戦を立てるための重要な指標です。
妊娠しやすい身体づくりのポイント
WHOや厚生労働省ではプレコンセプションケア(妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な情報提供をし、ヘルスケアを行うこと)の重要性を訴えています。
妊娠しやすい体づくり、安全な妊娠、出産を目指すために以下のポイントを意識しましょう。
- 1. 適切な体重を維持する
BMI[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗] 18.5以上25未満が適正体重です。痩せすぎ、太りすぎは妊娠に重要なホルモンに影響を与え、排卵しにくくなったり、妊娠後の流産、早産や妊娠高血圧・妊娠糖尿病など合併症のリスクが高まります。
- 2. バランスの良い食事を心がける
1日3食規則正しく食べるようにしましょう。たんぱく質や野菜を意識して摂取しましょう。特定のものだけ食べる、逆に特定ものを絶対に取らない、など極端な食生活は栄養の偏りにつながることもあります。バランスの良い食事を心がけましょう。
- 3. 禁煙する
喫煙は男女とも妊娠率を下げます。女性の場合は卵子の質に影響し、男性の場合は精子の数や運動率を低下させると言われています。また、妊娠中の喫煙や受動喫煙は早産や低出生体重児のリスクを上げますし、出産後、赤ちゃんの乳幼児突然死症候群にも関連すると言われています。喫煙本数によっては使用できない薬もあります。「妊娠したら止める」という方もいますが、妊活中から出産後まで悪影響がありますので、止めるなら早い方が良いでしょう。
- 4. アルコールを控える
過剰摂取は不妊症のリスクになります。WHOは妊娠を目指す期間、または妊娠中に安全なアルコールの摂取量は不明としています。米国生殖医学会は、アルコール1日2単位(缶ビールや缶酎ハイ500mL1缶=1単位)以上で、不妊症の確率が上がると発表しています。これらは人種や個人でも代謝能力が異なり、実際にこれくらいの量は安全、これ以上は危険という一般的な線引きは困難です。過量の飲酒は避けた方が良いでしょう。
- 5. 適度に運動する
週150分程度の有酸素運動を意識しましょう。ウォーキングやヨガなど、心拍数が上がりすぎない運動がおすすめです。
- 6. ストレスをコントロールする
ストレスは現代社会を生きていく上で避けることはできませんが、過度のストレスは妊娠からも遠ざかります。ストレスを発散できるような趣味やうまくコントロールできる方法を見つけたり、パートナーや友人、医療関係者などに相談するのも良いでしょう。良質な睡眠をとるのも妊娠に良いとされています。規則正しい生活を心がけましょう。
- 7. 感染症のチェック
母子感染に関連する感染症にはB型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV、風疹などがあります。特に風疹は、妊娠中に感染すると赤ちゃんに先天性風疹症候群(白内障、難聴、先天性心疾患など)を起こすことがあります。妊娠してからワクチンを接種することはできませんので、妊娠を考えたら早めに抗体を調べ、低い場合はワクチンを接種しましょう(女性はワクチン接種後2か月の避妊期間が必要です)。パートナーの方も抗体が低い場合はワクチンを接種しましょう。女性の抗体が低かったり、ワクチンを打っても抗体がつかない場合でも、パートナーからの感染のリスクを減らすことができます。
また、クラミジア感染症は卵管閉塞などを起こし妊活に影響が出ることがあります。男女とも症状が出にくいことも多く、知らないうちに感染していたり、パートナーに移してしまうこともあります。
- 8. がん検診を受ける
年に1回子宮頸がん検査を受けましょう。妊活を考える20代後半から増える癌ですが、早期に診断、治療ができれば、妊娠・出産も可能です。
- 9. 生活習慣病のチェック
高血圧、糖尿病などがあると不妊症にもつながりますし、妊娠後も重篤な合併症を起こすことがあります。適切にコントロールされていない場合はまずは病気を落ち着かせてから妊活を始める場合もありますし、治療に制限が出ることもあります。
- 10. 自分や家族の病気を知っておく
生活習慣病以外にも、不妊症や妊娠中に大きな影響を与える疾患があります。例えば甲状腺機能低下症は流産率に影響するという報告があります。その他慢性疾患など持病がある場合、主治医と妊娠に与える影響について相談しなければならないこともあります。また、家族の病気を知っておくと、生まれてくる赤ちゃんや妊娠する能力に影響を与える可能性のある要因を特定するのに役立ちます。
- 11. 毎日400㎍の葉酸を摂取する
妊娠する1か月前からの摂取が推奨されています。妊娠を考え始めたら意識して摂取しましょう。葉酸は赤ちゃんの脳や脊髄を形成するのに必要な栄養素で、細胞分裂が活発な妊娠初期に不足すると神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症)という先天異常が起こる可能性があります。
妊活のご相談は松本レディースクリニック
当クリニックは、「赤ちゃんが欲しいのになかなかできない」と悩んでいらっしゃる方のための不妊治療専門クリニックです。
妊娠しにくい方を対象に、不妊原因の探索、妊娠に向けてのアドバイス・治療を行います。
1999年に開業し、これまで、不妊で悩んでいた多くの方々が妊娠し、お母様になられています。
当院の特徴につきましてはこちらをご参照ください。
https://mladies.xsrv.jp/about-us/our-feature/
まとめ
今回の記事では妊娠を考え始めたら知ってほしいことをまとめました。特に体づくりについてはすぐに結果がでないものもありますので、妊娠を考えたら少しずつ取り組み始めましょう。また、妊娠しやすい体質に当てはまる項目が多くても、必ずしもすぐに妊娠できるわけではありません。妊活を始めてもなかなか妊娠しない場合は、早めに病院に相談しましょう。