人工授精とは?
人工授精と聞くと、自然ではない印象を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、持参いただいた精子を子宮の中に注入するという、人工的な操作は少ない処置です。人の手が介入するのは精子が子宮に入るところまでで、受精から妊娠までの過程は自然妊娠と同じです。
身体への負担も少ないため、女性側に明らかな不妊原因がなく、年齢が若い場合、もしくは性交障害がある場合などには体外受精より前に提案させていただくことがあります。
ここでは人工授精の適応や方法、費用などについて詳しくご説明していきます。
人工授精を行うケース・対象となる方
意外に思われる方も多いかと思いますが、タイミング療法とほぼ同じになります。
年齢など様々な条件を加味するべきではありますが、不妊期間が短い方で、不妊検査の結果に特に大きな異常がない方、になります。
精液所見がやや悪い場合や、性交障害がある方などは、よい適応といえます。
精子所見が平均値よりも大幅に下回る場合には、人工授精でも難しい可能性があります。ご相談いただければと思います。
月経周期が長く、自然の排卵が期待しにくい場合は、排卵誘発剤を併用して卵胞発育を促すこともあります。しかし、なかなか排卵調節がうまくいかない場合には、体外受精などへのステップアップをお勧めします。
人工授精の治療の流れ
排卵予想日より少し前を目途に超音波検査を行い、卵胞の大きさをみます。 高温期は約14日程度で終了しますので、月経周期が規則的で28日程度の方であれば、おおよそ月経周期の14日目(生理の始まりから14日目)が排卵日予想になります。
卵胞の成長をチェックし、排卵日を予想します。
卵胞径が18~22mm程度になると排卵されるので、あと何日で排卵するかを予測しながらみていきます。
必要に応じて2回目、3回目の超音波検査が必要になる場合もあります。
月経周期や卵胞径を参考にしながら人工授精を予定させていただきます。
必要に応じて、排卵を誘導するHCGの注射を行うことがあります。
あとは妊娠成立を期待しつつ、待つことになります。
予定月経日になっても月経が訪れず、さらに7~10日過ぎるようであれば、妊娠反応がないかどうか確認します。残念ながら月経が来てしまった場合は、再度卵胞の大きさを計測していくことになります。
人工授精に関するよくある質問
生理の予定日になっても生理が来ない場合は1週間待ってから妊娠検査薬で検査をご自宅で行ってください。妊娠反応が陽性であった場合は妊娠5週を目途に超音波検査を行います。
子宮内に胎嚢(赤ちゃんの部屋)が確認されれば臨床妊娠といわれます。
その後、妊娠6〜7週に心拍が確認されれば、当院は卒業となります。
その後は希望する産科施設へご紹介いたします。
人工受精にかかる費用は、通院や検査の回数、薬処方の有無などが異なるため一概にはいえません。
保険適用であれば、1回の処置代は5,460円です(その他超音波検査などの検査代、薬剤の費用がかかります)。
年齢、不妊期間、精子の具合、その他の不妊因子など様々な要素が関わってきますので、一概にいうことは難しいです。
女性の年齢などにもよりますが、3〜6回程度続けても妊娠しない場合は、体外受精を含めたステップアップを検討することをおすすめします。検査の結果によっては早めのステップアップをおすすめする場合があります。
目安は3~4回ですが、3~4回実施したら、その後AIHができないというわけではありません。AIHによる平均妊娠率は、8%程です。1回目で妊娠しなかった方のみ2回目を行い、2回目も妊娠しなかった方のみ3回目を行うため、回数が多くなればなるほど、妊娠率は下がっていきます。このすべてを平均した数値が8%前後となります。どのくらいAIHを続けていくのかは、ご夫婦のご希望によります。
精子を子宮内に送り込む手技ですので、精子が受精の場である卵管膨大部にたどり着いたのか、実際に排卵したのか、受精したのか、など不明なままです。
妊娠が成立すればもちろん良いですが、結果が出なかった場合に、どこが原因なのか、などは不明なままとなります。
また、人工受精を行うために1周期を要しますので、年齢的に時間的な猶予があまりない場合などは、回数を予め決めておいてもいいかもしれません。
合併症として代表的なものとしては、「感染」があります。
人工受精を行うことにより、菌が腹腔内に入り込み、感染を起こすことがあります。感染予防のために抗菌薬を内服いただきます。
感染が起きてしまうと、発熱やひどい腹痛を起こし、重症例では入院を要することがあります。
感染のリスクは0にすることはできず、ご理解の上、行っていただくことになります。
監修医師情報
専門 |
日本産科婦人科学会産婦人科専門医 日本産科婦人科学会産婦人科指導医 日本生殖医学会生殖医療専門医 生殖・内分泌 子宮内膜症 子宮腺筋症 着床 |
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お子さんが欲しいという希望や、なかなかできないという悩みに、少しでも手助けできるよう心がけています。
是非、いらっしゃって下さい。
2006年 | 東京大学医学部医学科(理科3類)卒業 |
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2007年 | 焼津市立総合病院 |
2009年 | 東京大学医学部附属病院 |
2010年 | 焼津市立総合病院 |
2011年 | 河北総合病院 |
2012年 | 東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻博士課程 |
2015年 | 日本学術振興会特別研究員 DC 着床関連の研究に従事 |
2016年 | 大学院博士課程卒業 医学博士 |
2016年 | 日本学術振興会特別研究員 PD |
2017年 | 東京大学医学部附属病院 助教 |
2019年 | 東京大学医学部付属病院 生殖グループ 総ハウプト |
2020年 | 松本レディースクリニック/リプロダクションオフィス 常勤医師 |
2021年 | 松本レディースリプロダクションオフィス 院長 |
専門 |
日本産科婦人科学会産婦人科専門医 生殖・内分泌 着床 |
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受診や治療自体がストレスにならないように心がけています。
なかなか授かれない状況で不安や悩みが多い方もいらっしゃると思います。
心折れずに次の一歩を踏み出し続けましょう。
お二人がゴールにたどり着けるように精一杯サポートさせていただきます。
2011年 | 東京大学医学部医学科(理科3類)卒業 |
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2011年 | 東京大学医学部付属病院 |
2013年 | 焼津市立総合病院 |
2018年 | 松本レディースクリニック/リプロダクションオフィス 非常勤医師 |
2020年 | 同 常勤医師 |
2021年 | 松本レディースリプロダクションオフィス 副院長 |